読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

哲学談戯

Benedictus De Spinoza『神学・政治論』(1670)

*思想・表現の自由を保障するための条件 スピノザといえば。。。 人格神を認めない理神論・汎神論と自由意思を否定した徹底した決定論——— という印象が強いが、実際、スピノザの著作に触れてみると、どうもそんなに単純ではないようだ。 こうした教科書的理…

中島義道『哲学の道場』(1998)

日常誰でもが出会う事柄に対して半病的なこだわりをもち、それに対して全身でぶつかってゆき答えを求めようとする無謀でいくぶん滑稽な(まさにトン・キホーテ的な)営みこそ哲学なのです。 哲学は、一切の事柄において、何の役にも立たない。 哲学が、日常…

Plato『パイドン』(B.C. 4c)

*プラトン中期の代表作 『パイドン』は、毒杯を仰ぐソクラテスの最期の姿を描いた作品。哲学的のみならず、文学的にも優れた内容で、プラトン中期を代表する著作だ。 「魂の不死について」という副題が付いているように、死を目前にひかえたソクラテスが、…

Plato『メノン』(B.C. 4c)

*対話から想起へ プラトン初期対話篇の中で、『ゴルギアス』とともに最後に書かれたと見られている作品。初期作と中期作の両方の特徴を持ち、中期への橋渡し的な作品として位置づけられている。 主題となっていることは、「徳(アレテー)は教えることが可…

Plato『プロタゴラス』(B.C. 4c)

*若きソクラテス 『プロタゴラス』は、プラトンの「対話編」の中では、『パルメニデス』に次いで、最も若いころのソクラテスの姿を描いた作品。作中でのソクラテスは、36歳となっている。プラトンの初期作品群に属した著作で、プラトン自身も、おそらく30代…

Plato『ソクラテスの弁明』(B.C. 4c)

私は神によってポリスにくっ付けられた存在なのです。大きくて血統はよいが、その大きさゆえにちょっとノロマで、アブのような存在に目を覚まさせてもらう必要がある馬、そんなこのポリスに、神は私をくっ付けられたのだと思うのです。その私とは、あなた方…

Francis Macdonald Cornford『ソクラテス以前以後』(1932)

汝自身を知れ――― デルポイの神殿に飾られたこの銘文は、ソクラテスの思想を最も象徴的に表した言葉だろう。 ソクラテス以前の哲学は、イオニアの自然学派が中心で、彼らの関心は、この世界が何によって作られ、どのようにして生成と消滅を繰り返すのかという…

Aristotle『詩学』(B.C. 4c)

*「詩」の体系的な把握 アリストテレスは、芸術の本質を「再現」(Mimesis)として捉えている。再現することは、自然を学ぶことであって、人間の本性に由来する。そして、再現されたものを鑑賞することに喜びを見出すのも人間の本性である。アリストテレスに…

Aristotle『弁論術』(B.C. 4c)

私は語り終えた。諸君はしかと聞いた。事実は諸君の手中にある。さあ、判定に入り給え。 *対話への信頼 よりよい答えというものは、討論や議論の中で生まれてくる。そういった「対話」に対する信頼が、西欧の知的伝統の根底にはある。思想や哲学は、誰か一…

René Descartes『哲学原理』(1644)

*新たな世界像の構築 『方法序説』(1637)、『省察』(1641)と哲学的探究を続けてきたデカルトは、1644年、『哲学原理』を刊行する。この著作は、新たな形而上学の構築と、スコラ的自然観に取って代わるべき機械論的、数学的自然観を展開することが狙いで、デ…

René Descartes『省察』(1641)

Je pense, donc je suis. - cogito ergo sum 我思う故に我在り 西洋哲学史の中でも、とりわけ有名なこの言葉は、近代理性の出発点であり、近代哲学の幕開けを告げるものだ。デカルトの思想は、この言葉とともに、近代的な明晰さの象徴として理解されている。…

René Descartes『方法序説』(1637)

*デカルトと中世 デカルトの哲学は、近代哲学の出発点だ。 代数学の発明、心身を分離した二元論、機械論的な身体論、数学的、力学的な自然観——— これらはすべて、近代的世界観の基礎をなしている。近代合理主義が彼の思想から始まったと言われるゆえんだ。…

René Descartes『情念論』(1649)

*受難、受動、情念 ラテン語の語源的文脈から言うと、西欧諸言語のpassionという言葉は、「受難」「苦しみ」という意味から来ている。苦しみを受けるという体験が、「受動passion」という意味になり、さらにその経験から引き起こされる激しい感情から、「情…

渡邊二郎・西尾幹二編『ニーチェを知る事典』(2013)

1980年に刊行された書籍の文庫化。 文庫本で800ページ近くある(文字通り)大著。ニーチェの専門家に限らず、多様な分野の研究者ら50人以上の執筆陣が、さまざまな面からニーチェ像を浮かび上がらせている。 やたらと分厚い本だが、各記事は非常に短く、主題…

Friedrich Nietzsche『喜ばしき知恵』(1882)

来るべき勝利が、いや、かならずや訪れる、ことによるとすでに到来しているかもしれない勝利が……。およそ予想外のことが起こったかのように、感謝の念がそこここに溢れ出ている。快癒した者の感謝の念が――。 ニーチェは『喜ばしき知恵』の冒頭の一節で、快癒…

Friedrich Nietzsche『道徳の系譜学』(1887)

*『善悪の彼岸』を補う書 ニーチェは、本書の前付けにて、この書を前著『善悪の彼岸』を補足、説明するものと述べている。 『善悪の彼岸』自体が『ツァラトゥストラ』の超人思想を説明するべきものだったはずだ。しかし、『善悪の彼岸』は、ヨーロッパ近代…

Friedrich Nietzsche『善悪の彼岸』(1886)

* 『ツァラトゥストラ』執筆後のニーチェ 『ツァラトゥストラ』全4部を書き上げたニーチェは、あまりに文学的な表現形式をとってしまったこの著作に対し、理論的な解説書が必要だと感じていた。 ニーチェは、1881年に散歩の途中で、永劫回帰の着想を得て、…

Friedrich Nietzsche『ツァラトゥストラ』(1883)

*Reader's High なんだかめまいの様な、頭がくらくらする感じだ。ニーチェのツァラトゥストラをようやく読み終えた。 これだけ意味不明で脈略のない文章を文庫本上下巻で永遠と読まされ続ければ、誰だってそりゃ、幻惑のようなくらくらした感覚を覚える。そ…

入不二基義『相対主義の極北』(2001)

*相対主義の自己適用化 2001年の著作。 相対主義は相対性そのものを真理として主張する。そのため自己論駁に陥る。本書はこの自己論駁を内在的に極限まで問い詰めた先にどのような思考が立ち現れてくるかを思索したもの。 まず第1章で、相対主義の考え方を…

佐伯啓思『自由とは何か』(2004)

2004年刊行。 自由という身近でありふれた概念をその思想的な根拠から問い直している。今の日本であまりにも当然のものになりすぎて、切実感の失われた自由というものに対して、いかにその意味を問い直すかが本書の主題だ。 *自由の歴史的背景 著者はまず自…

John Stuart Mill『自由論』(1859)

自由とは常に矛盾に満ちた概念だ。特に政治という領域、つまり、社会的な意思決定を行う場では、自由は政治と鋭く対立する。 この政治と自由をめぐる議論に一つの解答を試みたのが、ジョン・ステュアート・ミルの『自由論』だ。 自由主義の古典的名著であり…

永井均『ウィトゲンシュタイン入門』(1995)

*哲学することの意味 優れた哲学者とは、「これまで誰も、問題があることに気づかなかった領域に、実は問題があることを最初に発見し、それにこだわり続けた人」のこと――― 哲学の仕事は、すでに知られている問題に新しい解答を与えることではない。そこに問…

Jean-Jacques Rousseau『孤独な散歩者の夢想』(1782)

ルソーの遺作となった作品。 夢想とある通り現実と妄想の間を行き来するような内容で終始、ルソーの独白が続いていく。 ルソーは、一般的には社会契約論を唱えた社会思想家として知られているが、社会思想や哲学の他に、博物学、音楽理論、芸術論などの著作…

Sigmund Freud『戦争と死に関する時評』(1915)

そしてこの戦争がもたらしたもの、それは幻滅である。 *世界大戦がもたらした幻滅 第一次世界大戦のさなかに書かれた論文。フロイトが、第一次世界大戦という未曾有の戦争に直面して、それがいかに衝撃的だったかが非常によく伝わってくる。 フロイトは、こ…

Sigmund Freud『人はなぜ戦争をするのか』(1932)

『人はなぜ戦争をするのか』2008年刊行。 第一次世界大戦以降のフロイト後期の作品を集めた論文集。フロイトは、第一次世界大戦に直面して、人間の破壊的な欲望をまざまざと見せつけられ、それを契機にタナトスという死への欲動を理論化していく。その過程の…