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読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

巡回販売による被害をなくすために

*巡回販売の定義
 前回の記事で地域に対して責任を持たない巡回販売が悪質化、犯罪化しやすいことを指摘した。

blogboyo.hatenablog.com

 今までまったく野放しにされてきた巡回販売を法的規制の対象として検討すべき時に来ているのではないか。戦後の日本は、生活環境を保護することよりも、常に経済活動の方を優先してきたが、その中で住みやすい住環境という経済的価値には代えられないものを完全に失ってしまった。悪質な企業を野放しにして、被害者を増やし、拡声機でわめき散らして回る営業を黙認して、静かな住環境を壊している。それが今や取り返しのつかないほど非常識な住環境を日本国中で生んでいるのだ。

 巡回販売を法的に規制するには先ず、巡回販売の問題点を明確にする必要があるだろう。その問題点に沿って、その他の移動販売など巡回販売と類似の商売との区別を明確化し、その該当範囲を定める必要がある。
 今回は、巡回販売とその他類似の商売の違いを考えてみたい。

①巡回販売と移動販売
 巡回販売の定義、すなわち該当範囲を考えるにあったって、先ず気を付けるべきことは、巡回販売と移動販売は全く違うということだ。

 まず、この両者を区分することからはじめたい。巡回販売は、不特定の地域を対象にして、拡声機を使った放送を行いながら巡回している。それに対し、移動販売は、特定の場所に移動可能な店舗を一時的に設置して営業を行っている。

 移動販売は、店舗が移動型というだけで、実際の販売活動は、一定の場所に留まったまま行っている。これは、出張販売の一種として捉えるべきだろう。
 このような販売形態は、過疎化の進む地域や外出の困難な顧客に対して出張販売を行っているという点で有益で、公共的な価値を有している。また利用者からの要望も多いだろう。このような出張販売の一形態としての移動販売は、特定の地域、特定の顧客層との結びつきが強いという意味で、巡回販売からは区別するべきだ。
 また、駅前やオフィス街など顧客が多く見込める特定の場所に小型の可動型店舗を置いて一時的に営業している移動販売も、自治体の許可さえ正しく取得すれば問題ないだろう。

 このような移動販売は、海外でも広く一般的に見られるものであり、なにより、巡回販売のような社会問題化するほどの深刻な被害(恐喝や詐欺、高額請求等)が起きていない。中にはもちろん粗悪なものを売る業者もいるだろうが、そのような業者は、取り締まられるか市場から淘汰されるかして、消えていっている。
 巡回販売で問題になっているような恐喝等の犯罪は、移動販売では、ほとんど起きていない。移動販売が社会問題化しない要因にはやはり、一時的とはいえ、特定の場所で営業していることが大きく影響しているのだろう。業者を特定しやすいため、信頼性という点で、次の瞬間には居なくなっている巡回販売とは、やはり大きく異なるのだ。

②巡回販売と訪問販売
 では、拡声機による営業を必要としない訪問販売はどうだろうか。訪問販売は、拡声機を使って巡回しているわけではないが、各戸を不特定に回っているという点では巡回販売と変わらない。
 訪問販売は、実際の販売活動の際に不特定地域を巡回している。業者の連絡先が不明確になりやすい、という問題の構造は、巡回販売とまったく同じだ。この点からも訪問販売は、巡回販売と同様の業態と考えてかまわないと思う。

 周知のように、訪問販売も巡回販売と同じく、悪質な企業の温床であり、何十年も前から社会問題として取り扱われてきた。このように考えると、巡回販売と訪問販売は、その営業形態において非常に似通った性質を持っていることが分かる。どちらも特定の場所を定めて、その場で営業を行っているわけではなく、業者が特定されにくいため、犯罪的手法を用いた営業が横行しやすい。

 以上の点を踏まえて、巡回販売に定義を与えてみよう。
 巡回販売とは、すなわち、「拡声機による告知を行いながら不特定地域を巡回する営業」のことを指す。そして、このような営業形態が、日本以外の国にはほとんど見られない特異なものであり、また、悪質な業者を生み出しやすいのは明らかだ。これ以上、被害を拡大させないためにも、法的規制の対象にするべきだ。

*住民一人一人の意識と行動が重要
 巡回販売は、悪質な業者の温床であり、訪問販売と同じ悪徳商法の一つだ。このような犯罪の温床である巡回販売が、ごく普通に住宅街を回っているという光景が如何に異常なものか、いい加減気付くべき時だ。巡回販売は、地域社会の安全と住み良い環境を破壊する以外の何者でもない。
 これ以上、犯罪を助長しないためにも、巡回販売に対して住民が明確に拒否の意思表示をすることが重要だろう。
 まずは、一人一人が巡回販売の利用を止めること。そして万が一、利用して被害にあった場合も、それがたとえ微細な被害であっても泣き寝入りせず、警察に相談し、さらには国民生活センターや地域自治体に被害報告をすることだ。結局は、住民一人一人がそういった行動をとることが、最大の抑止効果なのだ。

 ここで言う被害とは、直接的な金銭的被害だけを言うのではない。地域の安全性や風紀、景観、そういった地域的価値の毀損も含んでいる。特に、廃品回収車の拡声機で問題になっている騒音についても、立派な被害の一つだ。拡声機によって騒音を撒き散らしているという観点から考えても、地域公共性を破壊する社会悪の一つだ。
 近年、廃品回収車による騒音に関して、110番通報が増大したことを受けて、警察も通報があれば出動するようになっている。110番通報をすれば、たとえ騒音被害だけの場合でも、警察は対応している。
 騒音規制に関する条例の効果がなかなか期待できない現在、騒音業者を回って来なくするためには、結局、地道に通報するのが一番効果的なようだ。都内のいくつかの地域において実際、住民から警察へ通報が増えたことがきっかけで、警察の取締りが増え、業者が近寄らなくなったところがあるようだ。
 警視庁には、110番のほかにも相談用の回線#9110が設けられている。そこで、業者による騒音の取り締まりを要望するのも一つの手だろう。

参考
相談ホットラインのご案内 :警視庁

 巡回販売に関しては、「需要があるから成立している」だとか、「外出の難しい高齢者などには、利便性が高い」などの擁護論が平気でまかり通っている。しかし、巡回販売の被害者として報告されている人々とは、まさにそうした高齢者であって、被害報告などの情報に触れることの難しい情報弱者が被害の中心になっている。需要があるという理由で巡回販売を野放しにしてきた結果が、被害の増大なのだ。そうした情報弱者を保護するためにも行政による規制が必要だということをわれわれは理解するべき時期に来ている。
(2010/11/30)