読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

床屋政談

Emmanuel Todd『シャルリとは誰か?』 (2016)

*テロの衝撃 2015年1月、パリにあるシャルリ・エブド本社がイスラム過激派と見られる犯人によって襲撃され、12人が殺害された。その後、報道が過激になるにつれて、フランスの世論は一時的にヒステリー的な症状に陥っていった。 非道義的で残虐なテロに反対…

松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』 (2016)

2016年刊行。 左っかわの人による左っかわへの批判。 日本の野党はすでに政党としての体を成していない。方向性を見失い、対案を何も出せないまま、ただ政権与党の批判だけを繰り返している。日本の左派勢力は、本来あるべき姿を完全に見失っている―――本書か…

上念司『国土と安全は経済(カネ)で買える』 (2014)

日本は、積極的に支那と戦争をする必要はありません。ひたすらアベノミクスで経済力を強化しつつ、支那を取り囲む国々と経済的な連携を強め、「静謐を保つ」ことに専念すればいいのです。放っておけば支那経済は自壊します。 国防のための戦略には、大きく分…

孫崎享『不愉快な現実』 (2012)

*世界最大の経済大国となった中国 2012年刊行。 中国は今後10年以内に、経済、軍事の両面でアメリカと肩を並べる大国になる――― これは、誰もが予想していながら、多くの人が目を背けている現実だろう。だが、その現実は予想よりも早く訪れている。2012年に…

孫崎享『日米同盟の正体』 (2009)

2009年刊行。 2015年9月、安保関連法制が成立した。この安保法制によって、従来の専守防衛という憲法解釈が大きく変更され、集団的自衛権を認めることになった。そして、安全保障に関して日米の一体化をより進める結果となった。 アメリカの安全保障に関する…

石井陽一『「帝国アメリカ」に近すぎた国々 ラテンアメリカと日本』 (2009)

哀れメキシコよ。アメリカにあまりにも近く、天国からあまりにも遠い。 *新自由主義の実験場となったラテンアメリカ 2009年の著作。 2008年9月のリーマンショックを経て、オバマ政権が誕生し、新自由主義への見直しが盛んに議論されていた頃の作品。 新自由…

櫻田大造『対米交渉のすごい国』 (2009)

*小国の対米戦略 2009年刊行。 カナダ、メキシコ、ニュージーランドのような小国が、いかにして独自の対米交渉を展開したかを検証した本。 著者はこの三国の外交政策の事例から、対米交渉の際の鉄則を導き出そうとしている。21の鉄則を取り上げているが、そ…

Emmanuel Todd『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』 (2015)

自由貿易は諸国民間の穏やかな商取引であるかのように語られますが、実際にはすべての国のすべての国に対する経済戦争の布告なのです。自由貿易はあのジャングル状態、今ヨーロッパを破壊しつつある力関係を生み出します。そして、国々をそれぞれの経済状況…

門倉貴史『中国経済の正体』 (2010)

*リーマンショック後も堅調な中国経済 2010年刊行。 中国がGDPで日本を抜く直前の経済状況を解説している。 2008年のリーマンショック後、世界で信用縮小が進むなか、中国金融はリスクの高いサブプライムローンを避けていたため、その影響をあまり受けなか…

津田大介『ウェブで政治を動かす!』 (2012)

*若者の選挙離れ 2012年刊行。 本書の冒頭で結構衝撃的な数字が出てくる。曰く、国政選挙の投票率は、この10年近く、20代の投票率が40%を切っている。一方70才を超える人々の投票率は80%近くを維持している。2009年の第45回総選挙における投票者の年齢は…

羽場久美子『拡大ヨーロッパの挑戦 増補版』 (2014)

*東西ヨーロッパの統合 2014年刊行。2004年の著作の増補版。 EUは、2004年に中東欧10カ国の加盟を承認した。一度の承認としては過去最大で、大規模拡大となった。これらの国々は、かつての東ローマ帝国領であり、文化的にはギリシャ正教、スラブ文化の色合…

山田順『資産フライト 「増税日本」から脱出する方法』 (2011)

*資本逃避のためのあの手この手 2011年刊行。 本書は、富裕層から一般の人まで資産を海外に移す動きが加速している現状を紹介している。 資本逃避は2009年の民主党政権が誕生したころから増え始め、東北大震災以降さらに増加しているそうだ。しかし、具体的…

ウォール街の悪夢 - 暴走する投機的金融

神谷秀樹『強欲資本主義 ウォール街の自爆』 (2008) *実業を超えて肥大化する金融部門 2008年刊行。リーマンショックを受けて出版された本。 2007年前後から投資銀行家によるPEファンド(Private Equity Fund)が、世界の金余りを背景として巨大化した。 この…

格差問題を食い物にする人たち その2

山田昌弘『希望格差社会』 (2004) *文明批評を根拠に語る経済問題 発表当時、非常に話題になり、かなり売れた本だが、内容自体は極めて粗雑で流行語を作ったということ以外には何の価値もない本。 著者は現在の日本で格差が広がっていることに対して、まず…

格差問題を食い物にする人たち

三浦展『下流社会』 (2005) *実態調査ではなく、意識調査 総中流化の「1955年体制」から階層化の「2005年体制」へと社会は変化している、というのが著者の基本的な認識だ。 だが、それを裏付けるためのデータはすべて階級意識の調査に基づいたものであり、…

橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司『おどろきの中国』 (2013)

*そもそも「中国」ってなに? 2013年刊行。著名な社会学者三人による鼎談。 前半は、社会学者らしく、ヴェーバー流の比較社会学的な見地から、中国社会の特徴を描いている。 社会学の理論は、ヨーロッパの近代国民国家を前提として概念が組み立てられている…

池内恵『イスラーム国の衝撃』 (2015)

独裁政権の暴力に頼っている限りは、過激派の発生は止まず、かといって過激派の抑制には、独裁政権を必要とする。このジレンマにアラブ世界は、疲れ切っている。 2014年に突如として現れ、中東情勢をいっぺんに緊迫化させたたイスラーム国(IS)。本書は、そ…

河野博子『アメリカの原理主義』 (2006)

*極右テロの頻発 2006年刊行。第二次ブッシュ政権下で、泥沼化するイラク戦争を主導した右派勢力とそれを支持する国民世論の右傾化を取材した本。 80年代末から90年代にかけて、アメリカでは極右勢力によるテロ事件が相次いだ。 中絶を行っている医院、診療…

堤未果『アメリカから<自由>が消える』 (2010)

*世論を誘導する政治 2010年刊行。 9.11のテロから10年以上が経過した今でも、テロの影に怯え、国民への監視を強化していくアメリカの姿が描かれている。 アメリカの歴史を振り返ると、歴史的に重要な局面において、世論が政治を動かすのではなく、政府が世…

公共事業に群がる人々 その2

藤井聡『公共事業が日本を救う』 (2010) *公共事業の問題点 民主党政権ができてよほどあせったのであろう、なりふり構わず公共事業への予算を確保するために、急遽出版した本、といった印象。 この著者は、公共事業はすべて無駄である、という行き過ぎた議…

公共事業に群がる人々

中野剛志・藤井聡『日本破滅論』 (2012) TPP反対派の中野氏と公共事業推進派の藤井氏との対談本。 論点がきれいに整理されて話が展開していくので、非常に読みやすい。両氏の基本的な考えを知るのにちょうどよい本だと思う。皮肉や当てこすりが多いのも、過…

日本国の借金 その2

辛坊治郎・辛坊正記『日本経済の不都合な真実』 (2011) キャスターとして有名な辛坊治郎氏と会計士?の兄、正記氏との共著。マスコミで流布されている国債安全論をひとつずつ暴論として切って捨てている。*なぜ日本国債は売れ続けるのか 日本の国債は現在に…

日本国の借金

経済協力開発機構(OECD)の発表(2012年6月)では、日本政府の借金は、対GDP比で214.1%だ。政府債務残高でみると、財務省の発表(2012年11月)では、983兆2950億円になる。・参考債務残高の国際比較(対GDP比) : 財務省国債及び借入金並びに政府保証債…