読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

日本戦時下の笑い

早坂隆『日本の戦時下ジョーク集 満州事変・日中戦争編』 (2007) *昭和日本の芸能史 昭和初期から太平洋戦争の直前まで、いわゆる戦時下を生きた庶民の笑いを取り上げている。 昭和は確かに政治、外交ともに激動の時代だったが、本書が扱っている範囲が太平…

Horatius『詩論』 (B.C. 1c)

ミネルウァの意に添わないなら、あなたは語ることもつくることもいっさいできないだろう。これこそあなたの判断であり、良識である。けれども、将来あなたが何かを書いたなら、まずそれを批評家のマエキウスと父上と私に読んで聞かせてから、原稿を家の奥深…

Aristotle『詩学』 (B.C.4c)

*詩学の体系的な把握 アリストテレスは、芸術の本質を「再現」(Mimesis)として捉えている。再現することは、自然を学ぶことであって、人間の本性に由来する。そして、再現されたものを鑑賞することに喜びを見出すのも人間の本性である。アリストテレスによ…

今野晴貴『生活保護 知られざる恐怖の現場』 (2013)

*生活保護に対するバッシング 平均賃金が下がり続けるなか、社会保険料は上がり続けていて、ますます労働者の負担は重たくなっている。もう私の生活なんてカツカツだ。 劣悪な労働条件で働く人が増え続けているなか、労働者の不満は、経営者や政治家よりも…

中島義道『哲学の道場』 (1998)

日常誰でもが出会う事柄に対して半病的なこだわりをもち、それに対して全身でぶつかってゆき答えを求めようとする無謀でいくぶん滑稽な(まさにトン・キホーテ的な)営みこそ哲学なのです。 哲学は、一切の事柄において、何の役にも立たない。 哲学が、日常…

Chris Anderson『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』 (2009)

2009年刊行。 出版直後から非常に話題になっていた本。本屋でも平積みになっていて、非常に気になっていたのだが、「分厚い」「ハードカバー」「1800円+税もする!」というのが妨げになって、買うのを躊躇してしまった。 そのうち、買わないまま一年ぐらいが…

Thomas Kasulis『神道』 (2004)

2004年刊行。翻訳は2014年。 著者は、アメリカにおける日本思想、宗教哲学の第一人者。 神道という、日本人にとってさえ、極めて捉えどころない宗教を外国人の視点から、体系的にまとめている。 多くの日本人にとって、神道は、普段、「宗教 religion」とし…

小林よしのり他『原発はヤバイ、核兵器は安全』 (2012)

*政策論争は少なめ、公と私の関わり方に関する議論がより中心 2012年の本。 「原発はヤバイ、核兵器は安全」という本書の題に惹かれて手にとってみた。 小林氏らしく、右も左も言わないような突拍子もない主張で、どのような議論が展開されるのか期待して読…

Bob Dylanがノーベル文学賞を受賞した意義

昨日13日、驚くべきnewsが飛び込んできた。ノーベル文学賞にBob Dylanの受賞が決まった――― Newsのhead lineで、最初、この記事の題を見た時、またネタ記事かと一瞬疑ってしまった。 Bob Dlyanにノーベル文学賞を!というのは、fanの間では、もう何十年も前か…

弓削達『ローマはなぜ滅んだか』 (1989)

人類史上初の世界帝国ローマは、いかにして滅んだか――― これは、人類史の中で最も魅力ある主題のひとつだろう。本書は、そうした問いに、ローマ繁栄の裏にある経済や社会構造の歪みなどに焦点を当ることで答えようとしたものだ。*カルタゴとの覇権争い ロー…

全ての道はローマに通ず - omnes viae Romam ducunt - All roads lead to Rome

3世紀末のディオクレティアヌス帝時代の資料に、ローマの公道の総距離数を示す資料が残っている。 それによると、幹線となる国営の公道は、総数372道、延べキロ数約85000㎞になる。 国土交通省の資料によると、日本の高速道路の総距離数は、2016年現在、9165…

東京の夏祭りに情緒はあるのか?

夏ももうすぐ終わる。 9月になっても蒸し暑い日は当分続きそうだが、なぜか9月に入ると夏は終わったという感じがする。 普段、出不精の私も、夏になると山やら川やらに出かけるようになる。ついでに近所の夏祭りに寄ったりもする。 ただ、毎年、夏祭りに出か…

Aristotle『弁論術』 (B.C.4c)

私は語り終えた。諸君はしかと聞いた。事実は諸君の手中にある。さあ、判定に入り給え。 *対話への信頼 よりよい答えというものは、討論や議論の中で生まれてくる。そういった「対話」に対する信頼が、西欧の知的伝統の根底にはある。思想や哲学は、誰か一…

畑村洋太郎『起業と倒産の失敗学』 (2003)

*企業倒産の事例集 成功に法則はないが、失敗には法則がある―――この言葉通り、企業が破綻した事例から失敗の要因を明らかにしようと試みた本。原著は2003年の刊行なので、2000年前後の破綻事例が紹介されている。 企業破綻にもさまざまな類型があり、その要…

畑村洋太郎『決定版 失敗学の法則』 (2002)

*組織論・経営論で欠けている失敗の知識化 2002年の本。 著者は機械工学の専門家。 機械を設計する上では、実験や実証による知識は欠かせない。 一つの機械が完成するまでには、実際に組み立てて、試行錯誤(trial and error)を繰り返しながら、正常に作動す…

熊谷徹『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』 (2015)

*極めて低い日本の労働生産性 2015年刊行。 2015年の一人当たりGDPでは、日本は26位。27位のイタリアに何とか競り勝った形だ。失業率12.4%(2015年4月)で、何よりも家庭と私生活を優先し、南欧の温暖な気候のなかで、シエスタとかいいながら仕事しないで休…

樺山紘一『ルネサンス』 (1993)

*近代性の裏に隠れたルネサンスの異なる側面 人間中心主義と合理主義的精神——— 14世紀は、古典文芸の復興の時代であり、中世的な宗教的盲目から解放された時代だった。この時代はのちにルネサンスと名付けられた。 19世紀中葉にミシュレーとブルクハルトに…

竹信三恵子『ルポ賃金差別』 (2012)

2012年刊行。 総務省統計局が2016年5月に発表した2016年1月から3月期の労働力調査によると、非正規雇用者数は、全体の37.1%で2007万人、女性だけで見た場合は、53.6%にもおよび、1364万人になる。 正規の職がないために非正規雇用に甘んじる人の割合も27%…

日本の賃金を考える

竹内裕『日本の賃金』 (2008) 【残念な本】「企業の正社員」という枠の中での議論 90年代半ば以降、国際競争の激化に伴って、日本企業の収益は悪化し、各企業は賃金体系の見直しを迫られるようになった。終身雇用は崩れて、成果主義が取り入れられるようにな…

Emmanuel Todd『シャルリとは誰か?』 (2016)

2015年1月、パリにあるシャルリ・エブド本社がイスラム過激派と見られる犯人によって襲撃され、12人が殺害された。その後、報道が過激になるにつれて、フランスの世論は一時的にヒステリー的な症状に陥っていった。 非道義的で残虐なテロに反対し、シャルリ…

松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』 (2016)

2016年刊行。 左っかわの人による左っかわへの批判。 日本の野党はすでに政党としての体を成していない。方向性を見失い、対案を何も出せないまま、ただ政権与党の批判だけを繰り返している。日本の左派勢力は、本来あるべき姿を完全に見失っている―――本書か…

左右盲

右と左の区別が咄嗟にはつかないこと、またはそのような人の、自称。 色盲などといった既存の言葉から造られたただの俗語であり、このような病名や学術用語が実際にあるわけではない。 ごく一般には、「右」「みぎ」「左」「ひだり」と言葉または文字で指し…

うつ病かな?と思ったら読む本

野村総一郎『うつ病をなおす』 (2004) *うつ病の3類型 うつ病を発症する要因は、多元的で、主に遺伝などの生物学的要因、習慣や体験など社会的要因、性格や気質など心理的要因などがあり、これらが複合的に作用して、うつ病が発症する。 うつ病にはいくつか…

René Descartes『省察』 (1641)

Je pense, donc je suis. - cogito ergo sum 我思う故に我在り 西洋哲学史の中でも、とりわけ有名なこの言葉は、近代理性の出発点であり、近代哲学の幕開けを告げるものだ。デカルトの思想は、この言葉とともに、近代的な明晰さの象徴として理解されている。…

René Descartes『方法序説』 (1637)

*デカルトと中世 デカルトの哲学は、近代哲学の出発点だ。 代数学の発明、心身を分離した二元論、機械論的な身体論、数学的、力学的な自然観——— これらはすべて、近代的世界観の基礎をなしている。近代合理主義が彼の思想から始まったと言われるゆえんだ。…

René Descartes『情念論』 (1649)

*受難、受動、情念 ラテン語の語源的文脈から言うと、西欧諸言語のpassionという言葉は、「受難」「苦しみ」という意味から来ている。苦しみを受けるという体験が、「受動passion」という意味になり、さらにその経験から引き起こされる激しい感情から、「情…

犯罪者の手記を出版する国

Canadian serial killer's self-published memoir reaches Amazon A memoir reportedly written by Canadian serial killer Robert Pickton and smuggled out of prison by another inmate has been withdrawn from sale on Amazon within hours of appearin…

上念司『国土と安全は経済(カネ)で買える』 (2014)

日本は、積極的に支那と戦争をする必要はありません。ひたすらアベノミクスで経済力を強化しつつ、支那を取り囲む国々と経済的な連携を強め、「静謐を保つ」ことに専念すればいいのです。放っておけば支那経済は自壊します。 国防のための戦略には、大きく分…

斎藤兆史『英語達人塾』 (2003)

巷に溢れる大量の安易な英語学習本に背を向け、本気で英語を習得しようという人に向けた本。 本書が目指すところは、ひじょーに次元が高い。 「Native English speakers並みを目指す!」 。。。というのではない。 Native speaker以上を目指す!というのだ。…

Friedrich Nietzsche『喜ばしき知恵』 (1887)

来るべき勝利が、いや、かならずや訪れる、ことによるとすでに到来しているかもしれない勝利が……。およそ予想外のことが起こったかのように、感謝の念がそこここに溢れ出ている。快癒した者の感謝の念が――。 ニーチェは『喜ばしき知恵』の冒頭の一節で、快癒…

Soundscape - 音という風景

Soundscape ecology It focuses on the study of the effects of the acoustic environment on the physical and behavioral characteristics of those organisms living within it. It has occasionally been used interchangeably with the term, acoustic…

阿部謹也『刑吏の社会史』 (1978)

*社会史とは何か 社会史とは何を対象にした歴史なのだろう? 歴史学の中でも政治史、経済史、法制度史、美術史、建築史といったものは、対象がはっきりしているので分かりやすい。しかし、社会史と言われると何をする学問なのか途端に分からなくなる。 この…

阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男』 (1974)

*人々を解釈へといざなう民話 洋の東西を問わず民話は、単純な起承転結の物語になれている現代人にとって、非常に理解しにくいものが多い。 動物譚や英雄譚など子供が喜びそうな題材を扱っていながら、内容の意図がまったくつかめないため、なぜか読後に不…

孫崎享『不愉快な現実』 (2012)

*世界最大の経済大国となった中国 2012年刊行。 中国は今後10年以内に、経済、軍事の両面でアメリカと肩を並べる大国になる――― これは、誰もが予想していながら、多くの人が目を背けている現実だろう。だが、その現実は予想よりも早く訪れている。2012年に…

孫崎享『日米同盟の正体』 (2009)

2009年刊行。 2015年9月、安保関連法制が成立した。この安保法制によって、従来の専守防衛という憲法解釈が大きく変更され、集団的自衛権を認めることになった。そして、安全保障に関して日米の一体化をより進める結果となった。 アメリカの安全保障に関する…

渡邊二郎・西尾幹二編『ニーチェを知る事典』 (2013)

1980年に刊行された書籍の文庫化。 文庫本で800ページ近くある(文字通り)大著。ニーチェの専門家に限らず、多様な分野の研究者ら50人以上の執筆陣が、さまざまな面からニーチェ像を浮かび上がらせている。 やたらと分厚い本だが、各記事は非常に短く、主題…

ボゼ - 鹿児島悪石島の奇祭

ボゼは、鹿児島県トカラ列島の悪石島に伝わる来訪神行事である。奇祭として知られており、1989年(平成元年)3月22日に、指定名称十島村悪石島の盆踊りとして、鹿児島県の無形民俗文化財に指定された。 盆の最終日翌日にあたる旧暦7月16日に、若者が赤土と墨…

アネクドート Anekdot

アネクドート(анекдо́т、anekdot)とは、ロシア語では滑稽な小話全般を指すが、日本ではそのうち特に旧ソ連で発達した政治風刺の小話を指して用いられることが多い。- Wikipedia どうしてもロシア人というと、すごく硬い印象があって、常に厳つい顔している…

Hobo

ホーボー(Hobo)は、アメリカで19世紀の終わりから20世紀初頭の世界的な不景気の時代、土地から土地へ働きながら渡り歩いた渡り鳥労働者のこと。- Wikipedia アメリカの鉄道建設は、1850年代から始まって、はやくも1869年には大陸横断鉄道が開通する。 この…

Friedrich Nietzsche『ツァラトゥストラ』 (1885)

*Reader's High なんだかめまいの様な、頭がくらくらする感じだ。ニーチェのツァラトゥストラをようやく読み終えた。 これだけ意味不明で脈略のない文章を文庫本上下巻で永遠と読まされ続ければ、誰だってそりゃ、幻惑のようなくらくらした感覚を覚える。そ…

Emmanuel Todd『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』 (2015)

自由貿易は諸国民間の穏やかな商取引であるかのように語られますが、実際にはすべての国のすべての国に対する経済戦争の布告なのです。自由貿易はあのジャングル状態、今ヨーロッパを破壊しつつある力関係を生み出します。そして、国々をそれぞれの経済状況…

櫻田大造『対米交渉のすごい国』 (2009)

*小国の対米戦略 2009年刊行。 カナダ、メキシコ、ニュージーランドのような小国が、いかにして独自の対米交渉を展開したかを検証した本。 著者はこの三国の外交政策の事例から、対米交渉の際の鉄則を導き出そうとしている。21の鉄則を取り上げているが、そ…

門倉貴史『中国経済の正体』 (2010)

*リーマンショック後も堅調な中国経済 2010年刊行。 中国がGDPで日本を抜く直前の経済状況を解説している。 2008年のリーマンショック後、世界で信用縮小が進むなか、中国金融はリスクの高いサブプライムローンを避けていたため、その影響をあまり受けなか…

加賀野井秀一『日本語を叱る!』 (2006)

タコツボ化する日本語 2006年刊行。 前作『日本語の復権』と同じく、「甘やかされた日本語」に喝を入れ、日本語の表現能力を鍛え直そうというもの。前作よりも読みやすく、論旨も掴みやすくなった。 日本人は、相手の察する能力に依存して、表現を短縮したり…

加賀野井秀一『日本語の復権』 (1999)

表現能力が衰退し、形骸化する日本語 1999年刊行。 日本語から見る日本人論。日本語による表現は、極度に相手の察する能力に依存していて、話者の表現能力の衰退を招いている。その結果、言葉が形骸化し、内実を失った表現が巷に氾濫するようになった。街路…

入不二基義『相対主義の極北』 (2001)

*相対主義の自己適用化 2001年の著作。 相対主義は相対性そのものを真理として主張する。そのため自己論駁に陥る。本書はこの自己論駁を内在的に極限まで問い詰めた先にどのような思考が立ち現れてくるかを思索したもの。 まず第1章で、相対主義の考え方を…

佐伯啓思『自由とは何か』 (2004)

2004年刊行。 自由という身近でありふれた概念をその思想的な根拠から問い直している。今の日本であまりにも当然のものになりすぎて、切実感の失われた自由というものに対して、いかにその意味を問い直すかが本書の主題だ。*自由の歴史的背景 著者はまず自…

Isaac Asimov『生物学の歴史』 (1964)

*生物学者としてのアシモフ アシモフといえば、SF作家として有名だが、同時にボストン大学医学部の生化学の教授でもあった(教鞭は執っていなかったようだが)。 一般向けの科学書(いわゆる、アメリカでよく言うpopular science)を多数執筆していて、本書…

Chris Guillebeau『1万円起業』 (2013)

起業することに資金は要らない 原書は2012年の出版。 以前紹介した身の丈起業に近い考え方で、起業をもっと身近なものとして捉えようという本。 従来、起業するといえば、資金を集めて、登記などの手続きをし、人を雇って、開業し、その上で大きなリスクを背…

古谷経衡『若者は本当に右傾化しているのか』 (2014)

*統計から見る若者の右傾化 13年末に公開された『永遠の0』のヒットや14年2月の都知事選で田母神候補が20代有権者の24%の得票率を獲得したことなどから若者の右傾化論が取り立たされているが、こうした議論は統計的な何の裏づけもなく信頼できないものが多…